子供の頃、食卓に昆布やわかめが登場する度に、決まり言葉のように言われていたのが「海藻は髪の毛にいいから」という言葉です。
大人になって抜け毛や生え際が気になった時に、その話を思い出して意識して海藻を食べるようになったという方もいるかもしれません。とはいえ、本当に海藻にそんな効果があるのかと疑問に思っている人もいらっしゃることでしょう。
そこで、今回は海藻の中でも「昆布」や「わかめ」に焦点をあて、髪の毛にいいというのは本当なのか?科学的根拠はあるのか?などを検証し、長年にわたって続けられてきた「昆布論争」に決着をつけたいと思います。
昆布やわかめが頭髪にイイって本当?それともただの迷信なの?
昆布やわかめが髪にいいかどうかを検証するために、ここでは昆布を例に挙げて皆さんの考えを見てみたいと思います。
インターネットで「昆布 髪の毛」などの言葉で検索をすると、「効果がある」派と「効果がない」派の両方が見つかります。
そこで、まずは両者の主張を見てみることにします。
「昆布を摂ると髪の毛にいい」根拠とは?
「昆布を摂ると髪の毛にいい」と言っている方は、以下の様な根拠を挙げています。
- 昆布は髪の毛にツヤを与える効果があるから
- 昆布のヨウ素やフコダインが髪の毛にいいから
- 昆布はシャンプーなどの原料にも使われているから
「効果がない」という人の理由とは?
一方、「昆布を摂っても髪の毛に効果がない」という方は以下の様な理由を挙げています。
- 海藻が海の中で黒々と生えているイメージからそう言われているだけ
- 髪の毛の成分はたんぱく質だから昆布は関係ない
- 昔、「ふのり」という海藻が洗髪に使われていたから、髪にいいと思われている
両者の主張を分析してみて分かった事は
両方の意見を見てみましたが、「昆布は髪の毛に効果がない」と言っている方達も、「昆布が髪の毛に悪い」と言っているわけではなく、「昆布に過大な期待をするな」といったニュアンスが多かったです。
更に両者の主張をよく見ていくと、3つに分類できることがわかります。
【内側からの効果】ヨウ素・フコダイン・たんぱく質といった栄養成分
【外側からの効果】シャンプー・洗髪などの外からの要因
つまり、昆布に効果があるかどうかには、体の内側からの働きと外側からの働きを見る必要があるということですね。これは、昆布に限らずわかめにも言えることです。
では、このように昆布だけを取り上げてみても様々な意見があるということをご紹介したところで、昆布やわかめが髪にいいと言えるのかどうかを具体的に検証しましょう。
世の中には様々な意見の奴がいるが、皆、髪のことに真剣なのは伝わってくるな。
多くの情報の中で、どれが信用できるのかを見極める事が大事だぞ。
昆布やわかめのような身近な食品に効果があるなら、すぐにでも始められるな。
昆布に含まれるヌルヌル成分「フコダイン」に注目!
では、昆布やわかめが体の内側から働く時の効果について検証しましょう。
先ほど、昆布を摂ると髪にいいとする意見の中で「ヨウ素」と「フコダイン」という成分が挙がっていましたので、まずは昆布やわかめの栄養素について詳しく確認したいと思います。
昆布やわかめの栄養素の特長
昆布は、10g(10センチ角・乾燥)で14~5kcalと、低カロリーの食品です。
昆布には「グルタミン酸」や「マンニット」などの旨み成分が豊富に含まれ、日本料理を中心に、出汁や食材として広く使われています。
昆布の主な栄養成分と働きを紹介します。
【ヨウ素(ヨード)】甲状腺ホルモンの材料になる
【アルギン酸】水溶性の食物繊維、便秘予防、ナトリウムを排出、血圧を下げる
【フコダイン】水溶性の食物繊維
わかめの場合も、カロリーは10gで14cal程度です。わかめにも、昆布同様にヨウ素やフコダインが含まれています。また、カルシウムやカリウム、マグネシウムも豊富に含まれています。
では、この中で、髪に効果があるとされるヨウ素とフコダインについて詳しく確認したいと思います。
ヨウ素は間接的に育毛に効果がある可能性あり!
ヨウ素は、ヨードや沃度などと呼ばれることもあるミネラルで、甲状腺ホルモンの材料になることから甲状腺の働きを高めます。そのため、成長期には必須の成分とされています。うがい薬や消毒薬の成分としても使用されていますから、馴染みがありますね。
食べ物として体内に摂り入れられたたんぱく質や脂質・炭水化物などの栄養素は、代謝されることによって体内で利用されるのですが、甲状腺ホルモンはこの新陳代謝を刺激・促進する働きがあります。
髪の毛の材料がたんぱく質であることはご存知の方が多いと思うのですが、ヨウ素を摂ることによって体内に取り入れたたんぱく質が代謝されやすくなることから、髪の毛の成長が促進され、その結果育毛に効果が期待できることになります。
フコダインは直接育毛に関わる成分!
フコダインは昆布やわかめの他、モズクなどの海藻に含まれるネバネバ・ヌルヌルしている成分で、食物繊維の一種です。
海の中でフコダインは、海藻を守り傷を修復していますが、これは、激しい海流の中で海藻が育つために必要な役割です。
人の体の中でフコダインは、ナトリウムや脂質など余分な栄養素の排出を促し、生活習慣病の予防に役立っています。また、免疫力を高める効果も期待されています。
実は、このフコダインは、毛母細胞という髪の毛を作る働きをする細胞を増やすことで、直接的に育毛に関わっているんです。では、直接育毛に関係するフコダインの働きについて、詳しく確認していきましょう。
昆布やわかめのヌルヌルに効果があるなんて初耳だな。
「フコダイン」って名前はあまり強そうじゃないが、強力なパワーがあるじゃないか!
今日は昆布を見なおしたぜ。
でも肝心なのは、髪にどんな影響があるかってことだな。詳しく聞かせてもらうとしよう。
フコダインで育毛促進!その仕組みを解説
昆布やわかめに含まれるフコダインが育毛に役立つのには、髪の毛の成長の仕組みが関係しています。では、詳細を見ていきたいと思います。
髪の毛には成長のサイクルがあった
タカラバイオ株式会社によると、下記のように髪の毛は通常4~6年のサイクルで生えかわります。
それぞれの時期の状態を確認してみましょう。
番号 | 時期 | 期間 | 髪や毛根の状態 |
---|---|---|---|
(1) | 新生期 | 新しい髪が生え始める | |
(2) | 成長期 | 2~6年 | 髪が太く長く伸びる |
(3) | 退行期 | 2~3週間 | 毛根の成長が止まる |
(4) | 休止期 | 3~4ヶ月 | 次の毛が育ち始め、徐々に古い毛が押し出される |
(5) | 脱毛期 | 古い髪が抜ける |
この(1)~(5)の繰り返しのことを「ヘアサイクル」と呼びます。
ヘアサイクルには個人差がありますが、特に「成長期」の長さに大きく開きがあることがわかります。
そこで、「タカラバイオ株式会社」のサイトにある、「ヘアサイクル」についての解説をご紹介します。
髪の毛の「成長期」を長く維持する事が抜け毛や薄毛を防止することに重要です。
育毛たんぱく質「FGF-7」が大きく関与しています。
つまり、髪の毛を豊かに保つためには、ヘアサイクルの「成長期」は長く、「休止期」は短い方がいいということになります。
更に気になるキーワード、育毛たんぱく質「FGF-7」が登場しました。では、「FGF-7」についてもう少し詳しくご紹介します。
育毛たんぱく質「FGF-7」が毛母細胞を増殖させるから髪が育つ!
育毛たんぱく質「FGF-7」は、どのようなたんぱく質なのでしょうか?タカラバイオ株式会社によると、髪の毛の構造は下記のようになっています。
これを見ると、育毛たんぱく質「FGF-7」が髪の毛の増殖に関わっていることがわかりますね。
つまり、簡単にまとめると、フコダインで髪の毛が伸びる仕組みは以下のようになっているということですね。
↓
フコダインが毛乳頭細胞で育毛たんぱく質[FGF-7]の分泌を増やす
↓
[FGF-7]が毛母細胞(もうぼさいぼう)を増やす
↓
毛母細胞が増えるので髪の毛が伸びる
このように、昆布に含まれるフコダインが育毛たんぱく質[FGF-7]の分泌を増やし、髪の毛を伸ばすのに役立つことが明らかになり、研究結果は学会でも発表されました。
もちろん、フコダインを含むわかめなどの海藻でも同様の効果が得られるということになりますね。「昆布やわかめを摂ると髪の毛にいい」というのは、ただの迷信ではなかったのです。
ガゴメ昆布って、産地はどこ?どんな昆布なの?
先ほど引用した文章に「ガゴメ昆布」という種類の昆布が登場しましたが、ガゴメ昆布は、主に北海道の南、函館周辺の海で採れる昆布で、長いものでは3メートル程になります。
昆布の表面が網目のようにザラザラしていることから、ガゴメ(カゴの目)と名づけられました。
タカラバイオ株式会社によると、ガゴメ昆布は昆布の中でも特にフコダインの量が多く、他の昆布の3倍も含まれています。
その為、ガゴメ昆布の水揚げの際には、強いネバリが発生します。
もちろん、その他の昆布でもフコダインを摂る事が出来ますので、絶対ガゴメ昆布でなければいけないとこだわる必要はありません。ですが、ガゴメ昆布が手に入れば効率良くフコダインを摂る事ができるんですね。
さらに、先ほどもご紹介したように昆布以外にわかめやモズクでもいいですし、ヒジキにもフコダインは含まれています。含有量で言えばガゴメ昆布が多いということですので、手軽に摂り入れられる海藻類を薄毛対策に利用してもいいですね。
なるほど、ヘアサイクルの成長期が短くなるとキケン・・と。
昆布を食べた時の効果が確認されたのなら、俺の髪にも期待が持てそうだな!
ガゴメ昆布とやらが気になるから、ちょっと函館まで行ってくるかな?
フコダインの自己修復力が頭皮の潤いを守ることで髪を育てる!
次に、昆布やわかめが体の外側から働く時の効果について検証しましょう。昆布やわかめに含まれるフコダインは、先ほども確認したように食品として食べても効果がありますが、髪につけることでも効果を得ることができます。
なぜかというと、フコダインには自己修復力があり、それが頭皮の潤いを守ってくれるからです。頭皮が乾燥すると、肌を守っているバリア機能が失われ、その結果外部からの刺激や雑菌の影響を受けやすくなるため、抜け毛が増えてしまいます。
そこで、フコダインが頭皮の潤いを保ってくれることで、抜け毛を防止できるという仕組みになっています。では、フコダインの保湿効果について詳しく見ていきたいと思います。
フコダインは頭皮を乾燥・細菌から守る!
先ほど、フコダインは激しい海流の中で海藻が育つために昆布を守って傷を修復する働きを持っている成分であることをご紹介しましたが、この海藻が自分を守るための働きが、頭皮を乾燥や細菌から守ってくれることがわかっています。
LpLpでは、ガゴメ昆布のフコダインを配合した、以下のような様々な商品を販売しています。他にもラインナップはあるのですが、いくつかをピックアップしてご紹介しています。
- 薬用シャンプー
- 薬用トリートメント
- ヘアカラー用シャンプー
- 頭皮クレンジングジェル
- ヘアカラートリートメント
実は、これらの商品は、先ほどフコダインの働きについてのお話の部分でご紹介したタカラバイオ株式会社と、LpLpが共同開発した商品なんですよ。ガゴメ昆布の研究を行っている企業と共同開発した商品ですから、効果が期待できそうですね!
ただし、例えばヘアカラートリートメントは一般的な市販の白髪染めである酸化染毛剤みたいに1度で染まるという性質を持っているのではなく、何度か使用することで色が定着していくなど、髪をコーティングする性質を持つからこその特徴もありますので、理解した上で使用したいものです。
頭皮が乾燥するとバリアが壊れるとは何とも嫌な話だが、フコダインの保湿効果で抜け毛も防げるとなると安心感があるな!
昆布やわかめを摂る時に気をつけたい事を確認しよう
昆布やわかめに含まれるフコダインが髪の毛にいいことがわかって、「これからは毎日欠かさず昆布を食べよう!」と思うかもしれませんが、気をつけたい事があります。それは、以下の3点です。
- 昆布やわかめだけを食べればいいわけではない
- 塩分量には気を付けて
- ヨウ素の摂り過ぎに注意
では、詳細を確認しましょう。
昆布やわかめだけでなく栄養バランスの良い食事を摂って
髪の毛の主な成分はたんぱく質で、その他にビタミンやミネラルも必要です。先ほども触れたようにたんぱく質は髪を作る元となる栄養素ですし、例えばビタミンには以下のような髪を健康に育てる働きがあります。
- ビタミンA…頭皮を潤わせる
- ビタミンB2…皮脂量を調節する効果によって頭皮環境を改善
- ビタミンB6…たんぱく質の吸収を促進
- ビオチン(ビタミンB7)…たんぱく質を使いやすくする
- ビタミンC…ストレス解消効果によって血流を改善
- ビタミンE…血管拡張作用によって頭皮の血流を改善
これまでにも確認したように、髪の毛は毛母細胞が増殖することで伸びるのですが、その時に毛乳頭細胞にきちんと酸素と栄養素が届けられなければ、毛母細胞の増殖は上手く行われません。酸素や栄養素は血流に乗って毛乳頭に届けられますので、ビタミンによる血流改善効果が役立つわけです。
また、ビタミンはたんぱく質の吸収にも関わっているんですね。
このように、薄毛改善に役立つ栄養素はフコダインだけではありませんので、昆布やわかめだけをたくさん食べていても、発毛効果が期待できないということです。だからこそ、バランスよく食品を選ぶ必要があります。
海藻ばかりを食べるという発想ではなく、逆にバランスのとれた食事の中に昆布や海藻類を取り入れることが大切です。
塩分の取り過ぎには気を付けて
昆布やわかめは海で育っているので、初めから多少の塩分を含んでいて、更に加工をする工程でも塩分が加わっている物が多いです。
このことを忘れないようにして食事に取り入れて下さい。
塩分ではないので全部取り除く必要はありませんが、汚れが気になる時は軽く拭いて使いましょう。
ヨウ素の摂り過ぎにも注意して
昆布を摂る時に気をつけたい、もう1つの成分は「ヨウ素」です。
先ほど、「ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になり、基礎代謝を高め、発育を促進する」と書きましたが、甲状腺ホルモンの分泌は多すぎても少なすぎても体に以下のような影響があります。
海藻類の極端な過食などによりヨウ素過剰摂取になることがあります。主な症状として
- むくみ
- 倦怠感
- 意欲の低下
- 皮膚の乾燥
- 便秘などの甲状腺機能低下症状
このような症状があります。
ヨウ素は多めに摂っても、全てが甲状腺ホルモンに代わるわけではありませんが、下記の点に気を付ける必要があります。
(1) ヨウ素を含む食品の過剰摂取を続けている場合
(2) ヨウ素を含む「うがい薬」の過剰使用をしている場合
(3) ヨウ素を含む造影剤を使ってレントゲンを撮る時
(4) 甲状腺に異常がある方
特に(3)、(4)の方は、医師に相談してから取り入れる様にして下さい。
それ以外の場合は、常識的な範囲での摂取を心掛けていれば大丈夫です。
ヨウ素が不足する心配をする方もいますが、私達日本人は海藻を良く食べる習慣があるので、通常の食生活でヨウ素が不足することは稀です。
これからは沢山昆布やわかめを食べるぞ!と思っていたが、多ければいいというわけではないんだな。
まさに「過ぎたるは及ばざるが如し」だな。
時々は晩酌のお供に「おつまみ昆布」でも食べてみるかな。
「昆布が頭髪にイイ」というのは本当だった!
ここまで、昆布やわかめの栄養成分「フコダイン」や、髪の毛が生えかわる「ヘアサイクル」について詳しく見てきました。
ただし、昆布やわかめだけを食べていても髪が生えてくるわけではないので、薄毛対策により効果を発揮することを目的として、バランスのいい食生活に適量の昆布やわかめをプラスするという意識で髪の毛の成長期が長くなるように心掛けたいものです。
うーん昆布が頭髪にいいなら、毎日「味噌スープ」を飲んでいるジャパニーズはハゲがいない筈なんじゃないか?
私の個人的な感想だと
★☆☆☆☆
昆布が頭髪に良いという信用度はこのくらいだな!
・・・ジャパニーズは気休め程度に飲んでおくといいかもな!