頭は意外と皮膚トラブルの起きやすい場所です。頭皮に痒みや痛みを伴うオデキが出来ることは、決して珍しい話ではありません。
でも「痛くも痒くもないオデキ」なら、それはひょっとしたら「粉瘤」(ふんりゅう)かもしれませんよ。
「えっ!何それ」と驚いた方も居るでしょうが、これ自体は決して怖いものではないのでご心配なく。
でも頭皮のことだけに、放ったらかしにしていると髪の毛のことも心配になります。なるだけ大切な毛髪を犠牲にすることなく、上手に治療したいものですよね。
今日はちょっと不思議な粉瘤のメカニズムと、髪にも優しい治療法をご紹介します!
粉瘤のメカニズム!頭皮のオデキはなぜ大きくなるの?
大人の頭皮にできるオデキの症状や原因はさまざま。どうせ汗疹かニキビだろうと高を括るのはよくありません。悪性のデキモノの可能性もゼロではありませんから、素人判断は禁物です。
頭皮のデキモノにはいろんな種類がある
- イボ
- 毛嚢炎
- 粉瘤(アテローム、アテローマ)
- 外毛根鞘性嚢腫
- 脂肪腫
- 骨腫
- 悪性皮膚腫瘍
頭皮にできるデキモノには、以上のようなものがあります。この中でたちの悪いものは悪性皮膚腫瘍だけで、それ以外は全て良性のものです。悪性腫瘍は非常に稀な病気なので、むやみに心配する必要はありません。
粉瘤=アテロームは徐々に大きくなる柔らかいしこり
意外と多いのが粉瘤=アテローム(アテローマ)です。粉瘤は顔・首・背中などにも発生し、頭部にできる粉瘤の一種が外毛根鞘性嚢腫です。
頭部粉瘤の症状とは以下のようなもの。単なる湿疹等とはちょっと様子が違いますよね。特にだんだん大きく膨れてくるのが粉瘤の特徴で、直径数センチ以上の出っ張りになることも珍しくありません。
- 頭皮の表面ではなく皮下にできる
- 最初の間は痛みや痒みはないのが普通
- 弾力のある膨らみもしくは柔らかいしこりが触れる
- 次第に大きくなってくる
げっ!?粉瘤の中身は皮膚のアカだった!
ところでこの粉瘤、膨らんだその中身は一体何だと思いますか?俗に粉瘤は「脂肪球」とも言われるので、ぶよぶよした脂肪のカタマリが入っていると思っている方が多いようです。
しかし粉瘤の中身の正体は実は脱落した皮膚の古い角質、つまりアカなんです。
粉瘤の「粉」は、モロモロした内容物の状態を表しています。実際には粉ではなくクリーム状の均一な物質で、色は白っぽい黄色やグレー。これを読んで「げっ!汚い」と思った方も多いでしょう。
でも粉瘤は、別に頭皮を不潔にしていたことが原因でなる訳はありませんよ。毎日ちゃんとシャンプーしていても粉瘤はできるのです。
粉瘤は表皮が皮膚の内側に入り込むことが原因
表皮の組織が、皮膚の内部に入り込んでしまったことが原因で起きる。この組織は密閉され、ターンオーバー(新陳代謝)で剥がれた角質が内部に溜まって次第に大きくなる。
粉瘤の原因は、このように頭皮の清潔や不潔とは一切無関係です。なぜ表皮組織が皮膚の内側に発生するのかについては諸説ありますが、毛の多い部分にできるので、毛根組織が関わっていると考えられています。
とにかく一旦皮膚の内側にできてしまった表皮組織は、それがどこであろうとターンオーバーを止めることはないので、出口のない老廃物は溜まっていく一方です。これが粉瘤のサイズが徐々に大きくなる理由なんですね。
粉瘤は10センチ以上になることも!
粉瘤は、放置すると直径10センチ以上にまで成長しますが、普通はそうなるまでに病院へ行く人が殆どです。
粉瘤をよく見ると、真ん中に黒っぽい開口部が見えることがあります。これを粉瘤のヘソ(臍)とも言い、炎症を起こすとここから膿が出てくることも。
頭に絆創膏を貼る訳にもいきませんから、こうなってくると仕事にも差し支えますよね。粉瘤は楽な治療のためにも、炎症を起こす前に病院へ行くことが肝心です。
粉瘤(アテローム)と脂肪腫は症状が異なる
同じように柔らかいデキモノとしてよく知られているのが脂肪腫です。
頭皮の膨らみを心配していると「それは脂肪の塊だから放っておいても大丈夫」なんて、周囲の人が訳知り顔にアドバイスしてくるかもしれません。
脂肪腫もやはり体のあちこちに柔らかい膨らみを生じますが、頭皮にできることは稀です。それに脂肪腫なら大きくなっても炎症を起こすことはなく、「ヘソ」もありません。
どちらも良性の腫瘍ですが、本物の脂肪腫と違って、頭皮の粉瘤は悪化すると痛みも出てくるため放置はよくないのです。素人判断をあてにせず、早めに病院で診てもらいましょう。
でも粉瘤は怖いものじゃないらしいな。中身が皮膚のアカっていうのが、ヒーロー的にはドン引きだが。
頭の粉瘤は早期治療が大切!放置するとハゲるってホント!?
そしてそうなってからでは、治療の大変さも全く違ってきます。特に頭皮の粉瘤は大切な髪の毛とも関係しているだけに、炎症を起こす前に治療を開始することが大切なのです。
粉瘤が炎症を起こすと痛いし臭い!?
粉瘤が炎症を起こすと、赤く腫れて非常に痛みます。そしてそのうち粉瘤の臍部分から膿などが出てきますが、実はこれ・・・ものすごく臭いんです。粉瘤の中身は長い間に溜まったアカと膿なんですから、それも当然かもしれません。
とにかく痛いやら臭いやらで、粉瘤が悪化するとどんなにのんびりした人でも病院へ駆け込むことになります。しかし炎症が酷くなってからでは、その治療も決して楽なものではありません。
炎症が治まらないと治療ができないような場合、当分は排膿(つまり膿を絞り出す!)のため通院しなくてはならないからです・・・これがまた痛いのなんの!
同じ治療をするなら、やっぱり炎症を起こす前に限りますね。なお軽い炎症ならば、抗生剤などの処方で抑えることができます。
粉瘤の中身を自分で押し出すのは禁物!
しかし炎症を起こさない間は、粉瘤は痛くも痒くもないただのタンコブみたいなものですから、中には自分でなんとかしようと考える強者も出てきます。
粉瘤には「ヘソ」がありますから、強く圧迫すればそこから内容物が出てくることも。これは現実によく行われているのですが、特に頭部粉瘤については絶対お薦めできることではありません。頭部は皮膚が薄い割に出血も多く、感染症のリスクも高いからです。
いくら気になっても、危険ですので頭部の粉瘤の内容物を自分で押し出すことだけは絶対にやめましょう。
粉瘤は袋を取らない限り治らない!
仮に無事中身を排出できて感染症もなく粉瘤が小さくなったとしても、決して喜んではいられません。これはあくまでも一時的なものに過ぎないからです。
上は、粉瘤の構造の図解です。粉瘤の中身が袋に包まれていることがわかりますか?この袋こそが皮膚の下に埋没した表皮組織、粉瘤の元凶です。
粉瘤の内容物は、他ならぬこの袋状の囊腫壁から発生しているのです。
つまりこれを手術によって完全に取り除かない限り、いくら内容物を排出しても粉瘤が治ることはありません。
・囊腫壁・・・・・・・・内容物を包んでいる袋(ここから老廃物が出る)
・皮脂や角質・・・・・・・・・・・・・内容物(老廃物が溜まったもの)
それに自己流処置によって粉瘤が炎症を起こすと、この囊腫壁が周囲の組織と癒着を起こし、その結果手術が難しくなるという新たな問題も発生します。なるべく炎症を起こす前に治療を受けるべきなのは、このような理由もあるからなんですね。
痛みがなければ治療は不要と主張するお医者さんも中には居るようですが、殆どの病院はなるべく粉瘤を放置しないよう呼びかけています。
頭部の粉瘤が悪化するとハゲることもある!?
それに頭部の粉瘤で心配になるのが、やっぱり髪の毛のこと。
粉瘤が大きくなって腫れ上がると、その部分の頭皮が薄くなって毛細血管や毛根がダメになり、結果的に脱毛に至ることもあるのです。
男性型脱毛症では頭皮が薄くなることが知られていますが、粉瘤の膨張によっても、それと全く同じ状態になってしまうんですね。
それに手術に踏み切った場合も、粉瘤のサイズが大きければ切開部も大きくなり、その分頭皮へのダメージが増えます。
・粉瘤の肥大で頭皮の血行が悪化しその部分の毛が抜ける
・粉瘤手術の切開部分の頭皮にダメージが生じる
毛髪のことを考えても、頭皮の粉瘤はなるべくサイズが小さいうちに手術を考えるべきです。
自己判断で放置してると、そこだけハゲちゃう可能性もあるんだからな。それに大きくなってからだと、手術した時の傷痕が大きくなるってことも忘れるなよ!
ホントにハゲずに治せるの!?頭皮の傷痕が小さい手術法とは
でも頭皮にメスを入れるのは、誰でもちょっと勇気が要りますよね。粉瘤の手術には2種類あって、頭皮へのダメージがそれぞれ異なります。
どちらの手術法になるかは、その病院の方針だけでなく、粉瘤の大きさや炎症の程度にもよるため、必ずしもあなたの希望が通るとは限りません。やはり粉瘤のサイズが小さく炎症も起こしていなければ、それだけダメージは少なくて済みます。
※以下、切除部位の画像もありますので「閲覧注意」です!
皮膚を紡錘形に切除する方法とは?
粉瘤の手術は、その切開法に特徴があります。まずは紡錘型に切除する方法からご紹介しましょう。
紡錘形に皮膚を切り、粉瘤を取り除いて皮膚を縫い合わせるという方法です。粉瘤の取り残しが少なく、技術的に簡単ですが大きなキズが皮膚についてしまうというデメリットがあります。
くり抜き法(へそ抜き法・ほぞ抜き法)とは?
紡錘型に切除する方法よりも、傷痕が目立たないのがくり抜き法です。皮膚に開けた小さな穴から内容物を絞り出すので、へそ(ほぞ)抜き法ともいいます。
炎症を起こしていても行えるというメリットがありますが、新しい手術法なので対応している病院はまだ少ないようです。
まずはトレパン(皮膚に穴を開ける器具)で粉瘤に穴を開け、そこから内容物を絞り出し、その後空になった粉瘤の袋を摘出します。傷は敢えて縫合しないこともあるので、傷痕は本当に目立ちません。
「湿潤治療」はガーゼや消毒薬を使わない処置法
くり抜き法で粉瘤を切除した後の処置法のひとつに、湿潤治療というものがあります。
これは切り傷や火傷にも取り入れられている特別な治療法で、ガーゼや消毒薬を使わず、患部を浸出液で常に潤った状態に保つことで自然治癒を促すものです。
具体的には、粉瘤摘出後の皮膚に開いた穴を特殊な被覆材で覆い、患部の乾燥を防ぎます。
浸出液に覆われた患部は治りが早く、傷痕もほとんど残りません。時間が経つと、髪が元の様に生える例も確認されています。
湿潤治療は以下のようにも呼ばれ、積極的に治療に取り入れている医師もいますが、全ての病院が対応している訳ではありません。またこの方法が適切かどうかは、できた粉瘤のサイズや症状にもよります。
・閉鎖療法
・潤い療法
紡錘形切除法とくり抜き法、どちらがいいのか?
どちらの手術法も頭皮に多少の傷をつけることは避けられませんが、くり抜き法は頭皮を切除しないので殆ど痕が残りません。
一方で紡錘形切除法の場合は、直線の縫合痕が残ります。原則的には粉瘤の直径と同じだけ切開することになりますが、病院によっては傷をできるだけ小さくする技術を持ったドクターも居ます。
2種類の粉瘤の切除法を決めるのは粉瘤の症状の程度だけでなく、このように医師の技術とも関わってくるため、病院の下調べが欠かせません。
紡錘形切除法 | くり抜き法 |
---|---|
炎症があると手術できない | 炎症があっても手術できる |
頭皮を切除する | 頭皮に穴をあけるだけ |
傷痕はやや大きい | 傷痕は小さい |
大きい粉瘤にも対応 | 通常サイズの粉瘤に対応 |
しっかり摘出できる | 取りきれない場合も |
頭皮の手術においては、脱毛を防ぐための独特の工夫や配慮も必要になってきます。同じ手術を受けるなら美容外科も併設しているような病院か、粉瘤治療に慣れた医師のいる病院が理想的です。
・皮膚科に美容外科や形成外科を併設しているクリニック
・粉瘤治療に熟練した医師のいる皮膚科
粉瘤は日帰り手術で手術費用は5千円から
粉瘤の摘出手術は保険対象で、費用は3割負担で5,000円から14,000円程度まで。手術は簡単ですので日帰りできます。
来院時点で炎症が酷いと普通はすぐ手術できないので、一定の治療期間と費用が必要です。また術後も何度か通院しますから、治療費全体としてはもう少し割高になるでしょう。
治療期間や治療費用は医師の治療方針によってかなり差があるので、事前の下調べはしっかりしておきましょう。
通常感染症などのトラブルがなければ、一般的には一週間から数週間程度で完治します。
とりあえず粉瘤が取れりゃいいだろうっていう病院よりは、傷痕や脱毛のことまで心配してくれるドクターがお薦めだぞ。
粉瘤は再発するケースもあるってホント!?安全な対処法と予防法
粉瘤は手術によって完治できますが、人によっては繰り返し再発することも。最後に、その原因や予防法についてご説明したいと思います。
粉瘤の自己療法は危険だし完治しない
まずは決して粉瘤を自己流で処置しないことです。ご説明した通り、粉瘤は袋を取らない限りは何度でも再発します。
粉瘤は怖い病気ではないので、大きめのニキビ程度に考えられがち。しかもヘソと呼ばれる開口部があるため、興味半分に自分で中身を押し出す人が多いのですが、これは百害あって一利なしです。
ニキビなら内容物の排出後は勝手に治りますが、粉瘤はそうではありません。
頭部の粉瘤を自分で何とかしようとすることは大変危険なだけでなく、完治しないどころか不快な症状が長引くだけ。その間に粉瘤は確実に悪化していきます。
最終的には病院のお世話になるしかないのですが、この自己療法が原因で治療が長引いたり、再発の原因となることもあるので要注意です。
炎症を悪化させてしまうと手術で取りきれなくなるケースも
また特に気をつけなくてはいけないのが、手術で粉瘤の袋が取り切れず、そこから再発するというケースです。
粉瘤の袋が一個だけならいいのですが、小さな袋が幾つもできていれば取り残しの可能性も出てきます。しかしこれを医師の腕のせいばかりにはできません。
粉瘤の袋が幾つもできてしまうのは、自己療法で炎症を悪化させてしまったことも原因のひとつとして考えられるからです。
袋の癒着や飛び火を引き起こしてしまうと、後々手術や治療を受けても完治が困難になるケースがあるので、粉瘤の自己療法はおすすめできません。
粉瘤の原因は特定することができない
原因がわかれば予防も可能ですが、なぜ粉瘤が出来るのかは明らかになっていません。
外傷が発症のきっかけになっていると考えられるケースもありますが、原因がはっきりしないことがほとんどです。
ストレスや食生活の乱れが免疫力の低下を引き起こし、それが粉瘤に繋がるとも言われていますが、これはどの病気にも共通する原因ですよね。
粉瘤のできやすい体質は遺伝する!?
しかし一生粉瘤とは縁のない人もいる一方で、なぜか何度も繰り返しできてしまう人がいます。
これは体質が原因かもしれません。そのような人は往々にして家族にも同様の人が居り、粉瘤のできやすい体質が遺伝していると考えられるのです。
粉瘤予防については、体質改善からのアプローチも可能なようです。
具体的には、粉瘤の原因として考えられる余分な水分が固まる「痰湿」・血行不良の「お血」の改善のために、以下の処方がアドバイスされています。
「温胆湯(うんたんとう)」
「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」
「ヨクイニン(ハトムギ)」
また肉や魚介類を控えて大豆や海藻を摂るといった食事療法にも一定の効果が見られますし、ドクダミ茶を常用したり、ティーツリーなどアロマオイルでマッサージするといった方法を取り入れている方もいます。
粉瘤が小さい間であれば悪化を防ぐことは可能
粉瘤のできやすい体質で、長年自分なりの工夫している方によると、食事など自然療法によって再発・悪化・炎症を防ぐことも不可能ではないようです。
但しこのような自宅療法が有効なのは、粉瘤が生じていないかできていてもまだ小さい間に限ったこと。
大きくなったり炎症が起きてしまったら、直ちに外科的治療を受けるべきだということは言うまでもありません。
しかし度々再発するのは体質が原因ってこともあるから、漢方や食事療法なんかもお薦めだ。俺も気になるからドリンクをドクダミ茶に変えてみたんだが、結構いい感じだぞ。
頭皮の粉瘤は怖いものではありませんが早期治療が大切です
頭皮のデキモノの中でも、粉瘤は良性のものなので心配は無用です。でもだからといって、自己流の治療は厳禁ですよ!
大きめのオデキという感覚で、安易に潰したり中身を押し出したりすると、痛みも強く不快な炎症を引き起こしてしまいます。
最終的には手術で切除するしかないのですが、頭皮の傷痕や脱毛を防ぐためには、炎症が悪化する前に治療を受けることや、良いドクターを選ぶことが重要です。
遅かれ早かれ病院へ行くことになるのなら、なるだけ軽度のうちがお薦めですよ。小さな頭皮の粉瘤なら簡単に切除できて傷痕も少なくて済みますし、再発の心配も殆どありません。
頭皮の粉瘤は部分ハゲの元だからな!悪化させてしまうと手術しても傷痕が残る可能性もあるから要注意だ。粉瘤は良性のデキモノだが、早期治療と病院選びが何より重要だ。