医療保険にがん保険、学資保険や雇用保険など世の中には様々な保険商品があふれています。思いもよらない病気や事故、リストラなど、人生何が起きるか分かりませんから、保険に入っていざという時のために備えておくことで、普段から安心して生活できますよね。
ここをお読みになっている方は、薄毛が気になっている男性が多いと思われますが、人によっては薄毛も「備えておけばよかった…」と感じるような想定外の損失に当たるのではないでしょうか。
ということは、従来の保険のように、ハゲたら保険金が支払われる「ハゲ保険」があってもいいのではないでしょうか。そこで今回は、ハゲ保険の商品化は可能かどうか妄想も交えつつ考えてみました。
ハゲ保険は存在するのか?保険会社が儲からない保険はない!?
保険商品には、生命保険や医療保険などのベーシックなものから、最近ではペット保険や、急に行けなくなったコンサートなどのチケットにかける保険(チケットガード)なんかも登場しています。
こんなにバラエティに富んでいる保険商品ですから、ハゲ保険があってもおかしくないような気もしますが、実際のところどうなのでしょうか。まずは保険というものの仕組みをご紹介するところから、お話を始めたいと思います。
保険の仕組み
私たちが保険に入る時、補償の内容や保険料と保険金のバランスなどを考慮しますよね。では、その保険商品を作る側である保険会社は、どのように保険料を設定しているのでしょうか。
総務省 統計局によると保険会社では大数の法則と呼ばれる法則を使用し、過去のデーターから死亡率や事故率などを元に生命保険や損害保険などの保険料を算出しています。
大数の法則とは、個人個人では個人や病気の確率を算出するのは困難ですが、ある一定数の集団であれば事故や病気になる確率を予測することができます。
つまり、生命保険であれば統計的な死亡率を元に保険料を決めているということで、これを「予定死亡率」といいます。これに加えて、
- 予定利率
- 予定事業費率
このような、保険金支払いのための資金運用や必要経費に関する比率を合わせて考えて、保険料を設定しています。保険会社も商売ですし、経営を続けられなければ加入者も困ってしまいますので、基本的に保険商品は保険会社が儲かるような仕組みになっているのです。
ハゲ保険はない!
ということは、保険会社が儲かる見込みがあれば、ハゲ保険があってもおかしくはないはずなのです。そこで、そんな保険商品はないものかと探してみましたが、今のところはハゲ保険なるものは存在しないようです。
ただし、円形脱毛症など公的な健康保険が適用される病気には、民間の保険会社の医療保険も適用される可能性があります。皮膚科などで治療を受けている人で、自己負担分を民間の保険から支払いたいという方は、保険会社に問い合わせてみる価値はあります。
しかし、AGAなどの公的保険が適用されない一般的な薄毛に関してもカバーされるような、ハゲ保険というべきものを販売している保険会社は、残念ながら無いようなのです。
その理由は、やはり利益が出ないと予測されるからでしょう。
なぜハゲ保険は存在しないのか?
ハゲ保険がない理由は、保険会社にとってあまりメリットがないためであろうことをお伝えしましたが、そのワケをもう少し詳しく考えてみましょう。なぜ、ハゲ保険ではあまり収益を期待できないのか。その理由には以下のようなものが考えられます。
- 薄毛の人が多すぎること
- ハゲても経済的危機や命の危険があるわけではないこと
- どれくらいハゲたかという証明が難しいこと
- 保険金ハゲが発生するおそれがあること
このような問題について、以下に詳しくお話します。
ハゲ保険では儲からない!?
とある調査によれば、日本では4200万人もの男女が薄毛に悩んでいるという結果が出たそうで、高齢化や生活スタイルの変化などの影響から、薄毛人口は年々増えているとも言われています。
多くの人がハゲるということは、もしもハゲ保険があったなら、保険会社が支払う保険金も膨大な金額になってしまいかねないというリスクがあります。
しかし一方で、頭髪が少なくなったところで気にしなければ良いという問題もあります。
ガンなどの病気は命に関わりますし、病院へ行かないという選択はなかなかできるものではありません。したがって、治療費がかかります。しかも、闘病中は働くことができなくなりがちですから、収入が減ってしまうこともよくあります。
このような病気とハゲは、根本的に性質が異なります。ハゲを気にせず治療しない人だっていますし、ハゲたからといって経済的に困窮するわけではありません。なのでハゲ保険を作っても、この不況の時代にわざわざ保険料を支払ってでも加入してくれる人が、果たしてどれくらいいるのか、という疑問も出てきます。
その他の予想される問題
しかも、ハゲ人口や保険金の他にも、まだいろんな問題が考えられます。AGAは進行性ですから、どのタイミングでハゲたと判定するか、いつハゲ保険の保険金を請求するのかを見極めるのも、なかなか難しいものです。
自分がハゲて行っていることを認めたくない人も多いですし、保険金請求に踏み切るまでに時間がかかることもあるでしょう。
しかし、「これは完全にハゲだ!」とはっきり分かるくらい進行してしまっていたら、保険金でAGA治療をしようにも、手遅れになることもあり得ます。それじゃあ、せっかく保険に入った意味がないですよね。
また、保険金欲しさにわざと毛を抜く人も現れるかもしれません。
保険金殺人ならぬ「保険金ハゲ」とでも言いましょうか。こんな人がたくさんいたら、保険商品としては成り立ちません。「禿げたくないけど心ならずも自然にハゲてしまった」ということを証明するのは、思いのほか大変なことなのかもしれませんね。
まあ、もしもあったとしたって、ここまで禿げてしまった俺はもう加入できないけどな!
もしもあったらどんな内容になりそう!?ハゲ保険を考えよう
商品化はなかなか厳しそうなハゲ保険ですが、せっかくですのでもしもあったらどんな商品になるのか考えてみたいと思います。妄想も交えながら考えてみますので、ぜひ、お付き合いください!
ハゲ保険の特徴
ではさっそく、仮想ハゲ保険の内容について考えてみましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
加入条件 | 30代までの脱毛が始まっていない人 |
払い込み期間 | 保険期間と同じ(ハゲるまで) |
加入時の提出書類 | ・本人確認書類 ・申し込み時点の頭髪の写真 |
保険料 | 月4000円程度 ただし、遺伝的にハゲる確率の高い人は上乗せあり |
保険金請求時の必要書類 | ・薄毛専門医の診断書 ・請求時点での頭髪の写真 |
ざっとこのような内容で考えてみましたが、いかがでしょうか。一般的な医療保険が基本的に健康な人しか入れないように、ハゲ保険もまたハゲていない人しか入れないのはいわば当然ですよね。また、年齢を重ねれば重ねるほど薄毛率は高まります。
その他の条件
医療保険に入る時には健康状態の告知義務があるように、ハゲ保険にも頭髪の状態の告知義務が課せられます。
なので、加入時に頭髪の写真を提出しなければなりません。また、保険金を受け取る時も、写真やAGA専門医などの診断書を提出して、本当に自然にハゲたことを証明する必要があります。
保険料の払い込み期間については、どうでしょうか。医療保険では、終身というものもあれば、60歳などある一定の年齢で払い込み終了という商品もありますよね。ハゲの場合は、60代ともなれば半数近くの人が薄毛なわけですから、一生保険料を払い続ける人はあまりいないでしょう。
保険料の設定
上記の通り、払込期間や保険金の受け取りに関する考え方としては、生命保険に近いハゲ保険ですが、生命保険金は残された家族の生活や葬儀代などを考えると数千万円単位になる商品もあります。しかしハゲ保険の場合は、
- クリニックでの薬物治療なら年間15万円程度
- 植毛なら150万円程度
治療にかかる金額は高くてもこの程度で、20年間薬物治療をし続けても300万円くらいです。
したがって、保険金も一時払いで150~300万円くらい受け取れれば良いとしましょう。
そこで、某保険会社の死亡保険商品を参考に、
- 30歳男性
- 死亡保険金200万円
この条件で保険料シミュレーションを試してみました。すると、保険料払い込み期間65歳までで3,246円という結果が出ました。
しかし、ハゲ保険の払い込み期間はもっと短くなりますから、その分保険料はアップします。また、ハゲる確率の高さを考えて保険会社の儲けを確実にしようと思うと、もっと高くしなければならないと思われます。しかも、遺伝的にハゲる確率の高い人は、さらに保険料が高額になってしまうでしょう。
やっぱりハゲ保険は非現実的?
ということは、単純に考えても月々4000円程度~の保険料を、ハゲるまで支払い続けることになります。
多くの人が薄毛に悩んでいるとはいえ、自分が絶対にハゲるかどうかは誰にも分かりません。
それなのに月々それだけの保険金をかけるくらいだったら、普通にハゲてからお給料をやりくりしたり、貯金を使ったりして治療したほうが確実とも言えます。
というわけで、やっぱりハゲ保険の商品化は難しいようですね。
しかし、「ハゲ保険」というネーミングもいかがなものか。「薄毛保険」「頭髪保険」が無難だが、ちょっとひねって「豊かな髪保険」「フサフサ保険」なんかもいいぜ。加入者が増えるかもしれないぜ!
実際に髪に保険をかけた人もいる!?でもハゲたら無効って!?
ここまで半ばふざけながらも真剣にハゲ保険について考えてきましたが、最後に実際にあった髪にまつわる保険の話題についてご紹介したいと思います。
髪に高額の保険をかけられた男
なんと髪の毛に100万ドル(当時で約8,400万円)の保険をかけたという人がいるのです。それは、アメリカのナショナル・フットボール・リーグで活躍していたトロイ・ポラマル選手。
ポラマル選手といえば、超ボリューミーなロングヘアーが印象的な、アメフトファンからも高い人気を誇る、ピッツバーグ・スティーラーズの名セーフティです。
100万ドルの保険は、実はポラマル選手が自分でかけたのではありません。この髪に注目したヘアケアメーカー「ロレアル」がポラマル選手を広告に抜擢した関係から、試合中に髪を引っ張られたり傷んでしまったりしないようにと、ロレアルが掛けた保険だったんです。
保険のゆくえ
この保険は、なんと禿げたら無効になってしまうとのこと!禿げたら保険金がもらえるハゲ保険とは真逆ですね。あくまでも、ヘアケアメーカーの広告にふさわしい、たっぷりとした毛髪を維持するための保険というわけですね。
しかし万が一ポラマル選手がハゲてしまっていたら、保険どころかロレアルとの契約も終わっていたことでしょう。
でも、このニュースが世に出たのは2010年。ポラマル選手は2015年に引退を発表し、その時点でも髪はフサフサです。というわけで、保険は無効になることなく無事に契約終了したと思われます。良かったですね。
それにしてもポラマル選手ほどフサフサなら一生禿げることはなさそうで、これまた羨ましいぜ!
備えあれば憂いなし!薄毛には保険より予防や貯金が現実的!
ハゲたら保険金がもらえる…そんな保険があったらつい加入したくなる方々も多いかもしれませんが、残念ながらそのような保険商品はなく、今後発売される可能性も低いようです。
薄毛人口が増加中とはいえ、実際にハゲ始めるまではハゲるかどうか分かりませんし、月々の保険料もお手頃とは言い難い金額にならざるを得ませんから、保険会社にとっても消費者にとっても、現実的には魅力的な商品にはならないと言えますね。
でも、最近では薄毛に悩む女性用のウィッグや育毛剤など、新たなマーケットも開拓されてきています。それを思うと、ハゲ保険もあながち夢や妄想ではなくなっていくかもしれません。もっと掘り下げて考える価値が、もしかしたらあるかもしれませんね。
確かに保険をかけておけば、ハゲた時に育毛や植毛の費用にあてられるし、かなり需要はありそうだ!でも絶対にハゲるかは誰にもわからないし、いざ入るとなると難しいかもなぁ。
将来的には本当にハゲ保険ができる時が来るかもな!そんな頃にオレの毛は何本残ってるのか…。考えたくもないな。